会長あいさつ

鴻信義

 この度、第64回 日本鼻科学会総会・学術講演会を、2025年9月25日(木)から27日(土)の3日間にわたり東京ドームホテルで開催させていただくこととなりました。伝統ある本学会を担当させていただくことは、大変光栄に感じるとともに身の引き締まる思いです。この機会を与えてくださいました春名眞一理事長をはじめ、役員各位および会員の諸先生方に心より感謝申し上げます。

 日本鼻科学会の歴史は長く、前身である鼻副鼻腔研究会が1962年に開催されたことに始まります。当初は副鼻腔炎が議論の中心でしたが、以来、アレルギー、腫瘍、嗅覚、外傷、睡眠など幅広い範囲の疾患が加わり、これらに関する基礎的あるいは臨床的研究の発表と議論を通して発展してきました。国内のみならず世界をリードしている学会の一つです。当教室担当での開催は、第1回、第9回大会(高橋良会長)、第26回大会(本多芳男会長)、第36回大会(森山寛会長)に次いで5回目になります。

 今回、学会のテーマを「科学と技術を明日につなごう」といたしました。学会ポスターは顔面の左半分をscientificに、右半分をartisticにイメージして作成しました。昨今、日本鼻科学会会員の先生方から、質が高い学術論文が国内外問わず次々と世に出ています。これまで60年以上の長い時間をかけ、先達が研鑽を積んできた成果の表れだと思います。鼻科学はこの先も、ますます充実した分野として医療を支えていくと期待されます。そのためにも、最新の知識や技術また今後の展望を共有し次世代へ継承していただきたい、そんな思いでプログラムを企画致しました。会員の皆様にはもちろん、会員ではない方々とくに若い先生方にも多数ご参加いただき、聴講や議論などを通して鼻科学の明日を感じ取って下されば幸いです。

 さて、今学会では教育講演を慈恵医大学呼吸器内科の荒屋潤教授にお願いしました。One airway one diseaseという概念を基に新たな切り口で気道に関するご講演をいただきます。招待講演は、米国ノースカロライナ大学のBrent Senior先生とタイ王国マヒドル大学のPongsakorn Tantilipikorn先生に、それぞれ鼻副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎の診療と研究最前線をご講演いただきます。シンポジウムは、①難治性アレルギー性鼻炎の治療戦略、②好酸球性鼻副鼻腔炎の難治化メカニズム、③嗅覚障害治療、④嗅神経芽細胞腫の集学的治療、⑤外鼻・鼻中隔手術の術式新分類と手技、をテーマとして企画しました。またパネルディスカッションは、①ESSの周術期管理、②緊急症例にどう対応するか、③嗅覚障害評価のアップデート、をテーマとしています。それぞれ第一人者の先生方にはもちろん、若手の先生方にも積極的に演者としてご参加いただきます。

 手術供覧およびカダバ―ダイセクション企画では、様々なadvanced ESS手技の実際を事前に録画した動画を用いて術者ご自身に会場でご解説いただきます。手術動画企画は、若手および中堅の先生方が普段ご施行している手術時・周術期の工夫などをビデオでご紹介いただくコンペティションです。恒例のアジア諸国との連携プログラムとして、韓国鼻科学会および台湾鼻科学会の理事長講演(鼻科学の将来を語る)、日韓台シンポジウム(難治性副鼻腔炎、鼻中隔疾患、小児疾患のケースプレゼンテーションとディベート)、基礎研究と臨床研究それぞれの国際セッションが予定されています。基礎ハンズオンセミナー、臨床ハンズオンセミナーとも例年通り開催します。今回は新たな試みとして、参加者ご自身にESS動画をお持ちいただきアドバイスを受ける場、また臨床研究ワークショップとして相談・アドバイスを受ける場も併設してみました。

 学会の主体は何といっても一般演題です。様々な分野から多彩なご演題を多数ご登録いただいております。会場でぜひ活発にご討議下さい。各企業との共催セミナーとしても、慈恵医大学分子遺伝学研究部の玉利真由美教授による好酸球性炎症に関するご講演始め、盛りだくさんの内容が予定されています。そのほか鼻腔生理学フォーラム、ダイバーシティ推進委員会企画も予定され、さらに大会終了後に行われる市民公開講座では、主に中高生に向けたワークショップやハンズオンを企画しています。是非先生方のお子様お連れ下さい。

 慈恵医大耳鼻咽喉科教室員一同、鋭意準備を進めております。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教室

鴻 信義